交感神経と副交感神経
交感神経と副交感神経
自律神経には、交感神経と副交感神経の2つの種類があります。交感神経は主に「外での活動を中心に担う神経」です。一方副交感神経は、主に「内部の生体活動を中心に担う神経」です。
交感神経が司る外での活動のために必要な働きとしては、
- 筋肉の緊張を保つ
- 心臓の鼓動を高める
- 呼吸を早める、瞳孔を開く
- 脂肪を分解してエネルギーを生み出す
などがあります。交感神経が活発に働くと、外で働いたり活動したりするのに適した身体状態をつくることができます。
元々野性の状況では、「狩りをする」「外敵から逃げる」などのために使われていた神経で、現代生活においては「仕事をする」「勉強をする」「社会的な活動をする」「必要な情報や知識を得る」「危険から身を守る」などのときに交感神経は活発に働きます。
それに対し、副交感神経が活発に働くと、
- 胃腸の動きが促進され、消化や排せつをスムーズにする
- 脂肪を蓄積する
- 筋肉の緊張をゆるめる
- 脈や呼吸をおだやかにする
- 血管を広げてリラックス状態に導く
など、消化・排せつ・睡眠・細胞の修復等の生体を健全に維持するための内部活動に適した身体状態がつくられます。
言ってみれば生きるための土台となるもので、こちらがしっかり行われていてこそ、外での活発な社会的活動も可能になり、そこで蓄積された疲労をリフレッシュすることもできるのです。
この2つの神経は24時間を通し、状況に応じて強弱が切り替わり、常に両方が支え合って働いていることが重要で、どちらが強くなりすぎても様々な問題がおこります。
このバランスが慢性的に崩れてしまった状態が「自律神経失調症」になります。交感神経の活動が強まりすぎていて、過緊張状態になっていることが多いです。
自律神経失調症の症状
自律神経は全身の様々な器官の働きと関わる神経なので、そのバランスが崩れることでおこる症状も様々です。
その人の体質によっても、自律神経失調症で目立つ症状が変わってきます。腹痛や下痢といった胃腸症状が出やすい方もいれば、頭痛や吐き気などの症状が出やすい方もいます。
そして身体症状だけでなく、精神症状も認められます。心と体は密接に関係していて、内分泌系や免疫系などとも相互に関与しています。(心身相関)
ですから自律神経失調症では、心身共に様々な症状が認められます。
自律神経失調症が疑わしい症状の特徴
自律神経失調症の患者さんは、まずは体の病気を疑って内科などを受診されることも少なくありません。自律神経失調症が疑わしい症状の特徴をご紹介したいと思います。
- ストレスや生活習慣との因果関係がある
- 複数の自律神経症状がある
- からだの薬の効果が不十分
自律神経失調症であれば、
- ストレス
- 生活習慣
- 女性ホルモン
などとの因果関係が認められます。
例えば、休日になったら症状が楽になるといったように、明らかにストレスに反応して症状が認められれば自律神経失調症が疑われます。その他にも、生活習慣や女性ホルモンの周期が影響していることもあります。
また、自律神経のバランスが崩れると、症状はひとつだけでないことが多いです。いくつかの自律神経症状が重なっていれば、自律神経失調症が疑わしくなります。
治療を行って行く中で少しずつ分かっていくこともあります。からだの治療を開始しても症状がなかなか良くならない場合、自律神経失調症の可能性を考える必要があります。
自律神経失調症をチェックする検査はあるのか
結論から申し上げると、自律神経失調症を診断するにあたって、検査はあまり行いません。
自律神経の機能をみる検査がないわけではありません。
- ヘッドアップティルト試験
- シェロング起立試験(体位変換試験)
- 眼球圧迫試験
- バルサルバ呼吸試験
- 頸動脈圧迫試験
- 寒冷昇圧試験
といった検査があります。
しかしながらこれらの検査は時間がかかりますし、重症度を評価しても治療的な意義が少ないです。このため、からだの病気が認められなければ自律神経失調症として、治療を開始していくことがほとんどです。
当院でもこのような自律神経の検査は行わず、身体的な検査と問診によって診断をしていきます。
自律神経失調症の診断と関連する病気
自律神経症状は、ストレスがかかる病気であればどのような病気にも生じることがあります。うつ病などの気分障害、パニック障害などの不安障害だけでなく、統合失調症や発達障害などすべての精神疾患で、自律神経症状はよく認められます。
日本心身医学会では、自律神経失調症を以下のように定義しています。
種々の自律神経系の不定愁訴を有し、しかも臨床検査では器質的病変が認められず、かつ顕著な精神障害のないもの